<理事長ご挨拶>

科学技術が高度化し、情報化が進展した現代社会においては、我々の生活はある意味では豊かになったといえますが、一方では、それに伴い新たな種々の事故や災害が発生しております。このような事故や災害の発生を未然に防止し、減災化を図るためには、これまでに発生した事故・災害の貴重な教訓を学ぶことが一つの重要な手段といえます。そのためには、これまで発生した事故や災害を収集・分類・整理し、有効に活用するためのデータベース化が必要であります。

事故・災害に関する情報を総合的・多面的に収集・分類・整理し、安全・防災に関する研究に資するため、1982年、安全・防災に関わる広い領域の研究者等が集まり、「災害事例情報研究会」(代表・故 難波桂芳 東京大学名誉教授)が発足し、「災害情報データベース」の構築を始めました。1993年からは、経団連関連の基金を得て、早稲田大学理工学研究所において災害情報に関する研究を進め、「災害情報データベース」の公開とオンライン情報の提供がスタートいたしました。そして、1999年、将来にわたって「災害情報データベース」を充実し、継続することにより、社会の安全、事故・災害の予防・減災対策に寄与することを目的に、特定非営利活動法人災害情報センターとして法人格を取得しました。

以来、産業界、学界、行政のご協力、ご支援を得て、「災害情報データベース」は、約13万件の事故・災害事例及び59万件を超える関連文献データを集載し、幅広い分野の事故・災害データを集載したデータベースとしては、国内外でも最大規模のものとなっており、社会の各方面で利用されるようになってまいりました。

災害情報センターは、事故・災害情報の提供を基本として、事故・災害情報に関する調査事業、解析事業、安全コンサルテイング事業、安全セミナー事業等も展開しております。特に、近年、産業安全の課題として指摘されている現場保安力強化に関しては、災害情報の活用の観点からも取り組んでまいりたいと考えております。

災害情報センターは、今後とも事故・災害情報を基に社会の安心・安全に資するため鋭意活動を展開してまいる所存ですので、皆様のいっそうのご理解とご支援、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

理事長 田村 昌三
(東京大学名誉教授)